関西プレスクラブは24日、西日本の報道機関の編集局長や社会部長らが選んだ「2010年10大ニュース」を発表した。1位は「尖閣諸島中国漁船衝突・映像流出事件」だった。番外の「おもしろニュース」には、サッカーのワールドカップ(W杯)でドイツの試合結果などを事前予想した「W杯的中・タコのパウル君」が選ばれた。2位以下は下記の通り。
(2)村木元厚生省局長無罪・大阪地検証拠改ざん事件
(3)民主政権迷走(普天間、参院選大敗、党首交代、小沢問題)
(4)北朝鮮が韓国領土に砲撃
(5)チリ落盤事故で奇跡の救出
(6)はやぶさ帰還・イトカワ微粒子確認
(7)異常気象の夏・猛暑日各地で記録更新
(8)ウィキリークスが米外交文書を暴露公開
(9)検察審査会による相次ぐ起訴決定(明石事件・小沢氏)
(10)根岸教授ら日本人2人にノーベル化学賞
共同通信社、全国の加盟新聞社、ラジオ・テレビ局の報道・論説担当者が、ニュース現場の視点で選んだことしの十大ニュースが決まった。
国内、国際の1位はそれぞれ、尖閣諸島周辺での中国漁船と巡視艇の衝突、北朝鮮の砲撃による朝鮮半島の緊迫と、東アジアの困難な政治状況を浮き彫りにするニュースが選ばれた。昨年は「政権交代」「オバマ始動」と、希望を込めた動きがトップだったが、どちらも大きな期待外れで終わった。
口蹄疫の流行、円高と通貨安競争、「無縁社会」の深刻化など、未来への希望を感じさせない出来事が多かったなかで、国内では、身を焼き尽くしながらけなげに帰還した小惑星探査機「はやぶさ」に感動。国際ニュースでは生き埋めになったチリの鉱山作業員33人の生還が世界を喜ばせた。
候補には入らなかったが、内部告発サイト「ウィキリークス」が25万点もの米国務省の公電を入手、暴露し始め、外交の世界を揺るがしている。これは来年にも尾を引きそうなので「番外」に登場させた。
国内ニュース
【1位】尖閣諸島で中国漁船が巡視船に衝突。ビデオ流出騒ぎも
沖縄県・尖閣諸島周辺の日本領海内で9月、中国漁船が海上保安部の巡視船に衝突、中国人船長が逮捕された。中国は日本人会社員4人を拘束、レアアース(希土類)の対日輸出を事実上停止、日中首脳会談を拒否するなど関係は悪化。那覇地検は処分保留のまま船長を釈放したが、政治介入との批判も高まった。
衝突時のビデオ映像は衆参予算委の理事に限定公開されたが、その後、神戸海上保安部の海上保安官が映像をインターネットの動画サイトに投稿。参院では仙谷由人官房長官と馬淵澄夫国土交通相の問責決議が野党の多数で可決された。
【2位】参院選挙で民主党が大敗。ねじれ国会に
7月の参院選で民主党が44議席で大敗。自民党は51議席で改選第1党、みんなの党が躍進し10議席を獲得。民主、国民新の連立与党は非改選議席を含めて参院の過半数を割り込み、衆参両院で多数派が異なるねじれ国会に。菅直人首相が唐突に消費税率引き上げに言及したことが有権者の反発を招いた。
【3位】厚労省元局長に無罪判決。特捜検事らを証拠偽造で逮捕
大阪地裁は9月、郵便制度悪用に絡んで虚偽有印公文書作成・同行使の罪に問われた元厚生労働省局長村木厚子被告に無罪を言い渡し、確定した。最高検は事件を担当していた大阪地検特捜部の主任検事がデータを改ざんしたとして証拠隠滅容疑で逮捕。上司の前特捜部長らも逮捕され、検察への信頼が地に落ちた。
【4位】普天間移設で日米合意。迷走の鳩山内閣は辞職し菅内閣誕生
鳩山由紀夫首相が6月に退陣した。首相が「最低でも県外」と表明していた米軍普天間飛行場(沖縄県)の移設先は迷走を続けた末に名護市辺野古周辺で日米両政府が合意。しかし社民党の連立政権離脱を招き、自らの「政治とカネ」の責任も取った。後継の首相に菅直人副総理・財務相が指名された。
【5位】宮崎県で口蹄疫の被害が拡大。全国を震撼
家畜伝染病の口蹄疫が4月、宮崎県で確認され、感染は5市6町に拡大。政府は発生地から半径10キロ圏内で感染した牛や豚のほか、感染していないすべての牛や豚もワクチン投与した上で殺処分した。約29万頭が対象となった。
【6位】観測史上最高の猛暑。熱中症多発で死者も
猛暑が全国を襲った。気象庁によると、6~8月の平均気温は統計を取り始めた1898年以降で最高だった。9月も記録的な残暑となった。熱中症で救急搬送された人は7月が前年同月の3倍、8月が4倍と急増、死亡者も相次いだ。農産物の生育にも影響が出て野菜は値上がり。「今年の漢字」には「暑」が選ばれた。
【7位】小惑星イトカワから「はやぶさ」が帰還
小惑星探査機「はやぶさ」が6月、7年ぶりに地球に帰還、イトカワの微粒子が回収された。月以外の天体との往復は世界初の快挙。予定から3年遅れの帰還で約60億キロの長旅だった。大気圏突入時に燃え尽きる機体本体の映像が感動を呼んだ。
【8位】所在不明の高齢者が続々と判明。「無縁社会」も深刻に
東京都足立区で戸籍上111歳の男性の遺体が7月に見つかったのを契機に、全国で所在確認調査が実施され、戸籍上は生きているのに「所在不明」となっている高齢者がいることが次々と分かった。家族や地域との絆が失われ、孤立化が進んでいる現代社会を取材したNHKの番組「無縁社会」も反響を呼び、流行語にも選ばれた。
【9位】ノーベル化学賞に根岸英一、鈴木章両氏
根岸英一米パデュー大特別教授と鈴木章北海道大名誉教授がノーベル化学賞を受賞した。2種類の有機化合物を結び付ける「クロスカップリング」の新しい方法を開発した業績が認められた。化学賞を日本人が受賞したのは7人、ほかの賞も合わせ計18人。
【10位】15年ぶりの円高水準。政府は市場介入
米国の金融緩和や経済減速を背景に今夏から円高ドル安が急速に進み、円は1ドル=80円突破寸前まで買われた。政府は9月に円売りドル買いの市場介入を6年半ぶりに実施。円高はデフレ圧力となる上、国内製造業の海外移転が進むことから、雇用悪化も懸念される。
国際ニュース
【1位】北朝鮮の韓国砲撃などで朝鮮半島緊迫
韓国海軍の哨戒艦が3月、黄海で沈没し、兵士46人が死亡・行方不明。韓国は北朝鮮魚雷が原因と発表。北朝鮮軍は11月、韓国・延坪島(ヨンピョンド)を砲撃し、韓国軍と砲撃戦に。韓国側は民間人2人と兵士2人が死亡、19人が重軽傷を負った。砲撃戦直後には双方から戦闘機が出撃し、島民の多くが韓国本土に避難。北朝鮮による民間人被害を伴う陸地砲撃は1953年の朝鮮戦争休戦以来初めて。
【2位】チリ鉱山落盤事故。69日ぶり作業員33人全員を救助
チリ北部コピアポ郊外のサンホセ鉱山で8月5日に落盤事故が起き、作業員33人が地下約700メートルに閉じ込められた。チリ政府は食料などを地下に送るとともに救出用縦穴の掘削を進め、救出用に作ったカプセル「フェニックス」を使用し10月12~13日の作業で全員を救出した。
【3位】北朝鮮の指導者金正日総書記の後継者に三男、金正恩氏
正恩氏は9月27日、朝鮮人民軍大将の称号を与えられた。同28日に開かれた朝鮮労働党代表者会で党中央委員に選ばれ、党中央軍事委員会副委員長に就任、後継者に決まった。母親は日本から帰国した高英姫(コ・ヨンヒ)夫人(2004年死去)。祖父の故金日成(キム・イルソン)主席の若いころによく似た顔立ち。
【4位】中国の国内総生産(GDP)、日本を抜き世界2位の経済大国に
中国のGDPは07年まで5年連続で2けた成長を記録。金融危機の影響を受けたが、08~09年も9%を超える成長率を維持。10年の成長率は9・9%(中国社会科学院)と予想され、通年で、米国に次ぐ経済大国になるのは確実。ただ、バブル懸念も強まっており、中国政府はインフレ抑制に躍起だ。
【5位】欧州の財政危機。ギリシャからアイルランドに波及
ギリシャの財政危機に始まり、アイルランドやポルトガル、スペインなど財政難に苦しむユーロ導入国の国債価格が下落し、ユーロの信認を揺るがした。欧州連合(EU)はギリシャ救済を決めたが、不動産バブルの崩壊や金融危機に直撃されたアイルランドへの連鎖を防げなかった。
【6位】中国の民主活動家、劉暁波氏にノーベル平和賞
劉氏は1989年の天安門事件の際の民主化運動に参加。2008年12月、共産党による一党独裁体制の廃止を呼び掛ける「〇八憲章」を発表して拘束され、国家政権転覆扇動罪で懲役11年の判決を受けて服役中。10年12月にノルウェー・オスロで授賞式が行われたが、中国政府は劉氏や妻の出席を認めず、74年ぶりに本人、家族ともに不在の式典に。劉氏の受賞は中国の民主化運動への励ましとなったが、中国政府は活動家への監視や取り締まりを強めた。
【7位】米中間選挙で与党、民主党が敗北
下院(定数435)のうち、共和党242、民主党193となり、民主党は4年ぶりに過半数を割り込んだ。選挙はオバマ大統領への信任投票、12年次期大統領選の前哨戦とみなされる。景気低迷による高い失業率、財政赤字、医療保険改革への批判から、与党が票を減らした。草の根の保守派運動ティーパーティー(茶会)が共和党支持で力を示した。
【8位】通貨安競争が激化。先進国と新興国が対立
各国は輸出振興のため通貨切り下げを競った。米国は巨額の貿易黒字を持つ中国に人民元切り上げを迫り、米国の金融緩和については、ドル安容認と新興国から批判が集中した。11月、日米欧と新興国の20カ国・地域(G20)首脳会合は、切り下げ競争を回避する方針を確認した。
【9位】メキシコ湾の油井事故で原油が大量流出
米南部ルイジアナ州沖のメキシコ湾の石油掘削基地が4月20日に爆発、海底の油井から大量の原油が流出し、海を汚染した。オバマ大統領は米史上「最悪の環境災害」と指摘。流出阻止作業は難航、事故を起こした英石油大手BPは油井に「密閉ぶた」を装着、流出は7月半ばほぼ止まった。
【10位】中国の次期最高指導者に習近平氏
10月の共産党中央委員会総会決定で、党内序列6位の政治局常務委員で国家副主席の習氏が中央軍事委員会副主席に就任。胡錦濤国家主席の後継者に確定した。53年6月生まれ。副首相を務めた父親は改革派とされ、中国国内には政治体制改革推進への期待感もあるが、手腕や開明度は分からない。